アトピー性皮膚炎の治療を支えるのは、
実は"正しい洗顔"でした。

かゆみや痛みが悩ましいアトピー性皮膚炎。アトピー性皮膚炎のスキンケアは顔だけでなく、身体にも言えることなので、乾燥しやすくまた敏感な状態から守るために、肌に負担をかけない洗浄を心がけたいものです。今回は、岡山県倉敷市の皮膚科「ほう皮フ科クリニック」の院長・許 郁江先生に、アトピー性皮膚炎治療に求められる洗顔方法をテーマにお話をうかがいました。

2018.06.01

  • 皮膚科専門医 許先生に聞く!
    洗顔する大切さと洗顔の基本術

    • バリア機能の低下が肌あれを誘発

      アトピー性皮膚炎の発症には、フィラグリン遺伝子の異常による、皮膚バリアの機能低下が関係していると考えられています。つまり、皮膚バリア機能の低下により外からの刺激を受けやすくなり、肌のかゆみや過敏につながっているのです。

      アトピー性皮膚炎においても、まずは正しく洗うこと、そして正しく保湿することが不可欠です。アトピー性皮膚炎の患者さんの中には、乾燥やダメージから肌を守るために、朝晩ともに水洗いだけや、ほとんど洗顔をされない方もいらっしゃいます。もちろん患者さんの症状次第では、水洗い程度の軽い洗顔を促す場合もありますが、ファンデーションやポイントメイクをされている場合は化粧汚れ、それ以外の場合でも不要な角質を取り除いて、肌を清潔な状態へと導いてください。

      関連記事 『 肌美人の基本は、"正しい洗顔"でした。 』 を読む
    • 正しい洗顔で
      肌のターンオーバーを整えよう!

      外界の刺激や異物の侵入から体を守る皮膚バリア機能。アトピー性皮膚炎の方は、このバリア機能が低下しているため、洗顔で古い角質を洗い流し、肌のターンオーバーを整えることが重要です。正常なターンオーバーが行われていれば、肌のトラブルは起きにくく、過度な乾燥やニキビ、くすみなどが生じる可能性が低くなります。
      肌のターンオーバーのサイクルは年齢や個人差により変わりますが、約45日と言われています。外から見ると肌の厚さや肌質は変わらないので、普段は意識しないものの、ターンオーバーを繰り返すことで、肌は入れ替わっているのです。

    • 肌にとって必要な
      皮脂まで落とすのはNG

      洗顔により肌を刺激しないように、低刺激のメイク落としと洗顔料を選んでください。手のひらや泡立てネットで弾力のある泡をつくり、泡を使って肌をなでるように洗うという点は、正しい洗顔方法と変わらないと思います。ですが、皮脂をとりすぎない、必要な皮脂、潤いは残しながら洗浄することをより意識をしましょう。洗顔で汚れが十分に落ち切ると、次の保湿剤の角質層への浸透がよくなります。肌が潤っているときに保湿剤を使って潤いを補い、肌にフタをして、外からの刺激をガードするように意識しましょう。

    • 刺激がある場合の対処法は?

      炎症のある部分は泡をのせるくらいの、刺激の少ない洗顔法を試してみてください。万が一洗顔時に痛みが出たり、洗顔後の化粧水がしみたりと肌にトラブルを感じた場合は、すぐに皮膚科に相談するようにしてください。治療に専念後、適切なタイミングでスキンケアを行う必要があります。バリア機能が改善してから、通常の洗顔料を使った洗顔に戻しましょう。また、治療薬に多い軟膏剤は油が多く含まれているため、落とさず塗り続けると、ゴミや皮脂が一緒に付着し続け、清潔でない状態をつくります。患部の痛みがない場合は必ず洗顔料で洗い流し、もう一度塗りなおしましょう。この機会に医師と相談しながら、洗顔方法を見直していただけたらと思います。

監修医師:許 郁江 先生

ほう皮フ科クリニック 院長

韓国ソウル大学医学部卒業。
岡山大学医学部皮膚科にて研修後、米国ハーバード大学医学部皮膚科に留学。
International Training Program for Dermatology修了。
興生総合病院皮膚科医長を経て、2007年、倉敷市にほう皮フ科クリニックを開設。
岡山医療技術専門学校非常勤講師。
患者さんの気持ちに寄り添う丁寧な診療で、皮膚疾患全般の治療を行っている。