光が残す痕跡「肌の変化」と未来を守るスキンケア
iniksでは、肌悩み解決のサポートができるよう、スキンケアの情報発信に努めております。
2025年11月12日、皮膚の日※に、『光が残す痕跡「肌の変化」と未来を守るスキンケア』オンラインセミナーを行いました。
今回は同じく皮膚の日に新潟県上越市で開業された、わか皮ふ科クリニック 院長 石田和加先生に、最新の皮膚科学や医療内容を踏まえつつ、紫外線対策の重要性についてご講演いただきました。
※皮膚の日: 11月12日をいい(11)、ひふ(12)で「皮膚の日」
2025.11.27
監修医師:石田 和加 先生
わか皮ふ科クリニック 院長
1994年帝京大学医学部医学科をご卒業後、富山医科薬科大学(現:富山大学)皮膚科ご勤務の後、新潟県立中央病院皮膚科 部長を経て、2012年に「わか皮ふ科クリニック」をご開業。4人のお子さんを育て上げた経験も活かし、赤ちゃんからご高齢の方まで、様々な年代の患者様の肌悩みに応えている。保険診療だけでなく美容医療にも力を入れ、地域の方の健康で美しい肌作りに尽力される。
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近年の皮膚科学や美容医療の分野で重要な「エクスポゾーム」
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エクスポゾームとは、生まれてから死ぬまでの間に私たちの体が触れる、あらゆる影響のことを言います。
例えば紫外線はシミ、シワ、たるみといった光老化の要因になるだけでなく、あらゆる皮膚疾患の悪化因子となり得ます。特に紫外線により悪化する皮膚疾患としては、尋常性ざ瘡(ニキビ)、アトピー性皮膚炎、酒さなどが代表として挙げられます。▼遺伝子以外の要因で、私たちの健康・肌状態に影響を与える外的要素
分類 例 肌への影響 紫外線(UV) 太陽光、日焼け 光老化、シワ、シミ、炎症、酸化ストレス 大気汚染 PM2.5、排気ガス バリア機能低下、炎症、ざ瘡悪化 ストレス、睡眠不足 精神的ストレス、短時間睡眠 皮脂分泌亢進、ニキビ、くすみ、慢性炎症 栄養 高GI食、乳製品、糖質過多 ニキビ、皮脂増加、糖化 化粧品 粗悪な製品、刺激成分 毛穴詰まり、接触皮膚炎 気候 温度変化、湿度変化 乾燥・敏感肌・脂性肌へのゆらぎ
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皮膚バリアの役割を果たす「マイクロバイオーム」
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私たちの肌はマイクロバイオームと呼ばれる多様な菌叢に守られており、まるでラップのように皮膚表面を覆うバリアの役割を果たしています。マイクロバイオームは、皮膚を弱酸性に保ち、保湿成分を作り出すなど、バリア機能を保護する働きがあります。このため、マイクロバイオームが乱れると皮膚バリア機能は低下し、肌の水分蒸散が増え、外部からの病原菌が侵入しやすくなります。
例えば、ざ瘡やアトピー性皮膚炎の病態も、このマイクロバイオームの破綻が大きく関与していると考えられています。
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過度な紫外線は、様々な皮膚疾患の悪化因子
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酒さやアトピー性皮膚炎は、過度な紫外線により症状が悪化することが分かっています。
実際に患者さんへ、疾患治療と併せ日焼け止めの徹底指導を行った結果、治療がスムーズになり改善した症例がいくつもあるそうです。
日本皮膚科学会から発出されている治療ガイドラインでも、酒さやアトピー性皮膚炎に対し、日焼け止めの使用が推奨されています。紫外線はあらゆる皮膚疾患の悪化因子となるため、治療においても適切な遮光は必須です。
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一年中降り注いでいる紫外線
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つくば市の紫外線月別照射量のグラフを見てみると、秋から冬にかけても、UVA・UVB共に確実に降り注いでいることが分かります。
【図1】2021年UV-A量観測データ(つくば市)
【図2】日積算UVB紫外線量(1997~2014年気象庁データ)
紫外線は皮膚疾患を悪化させるだけでなく、シミ・シワ・たるみといった光老化や皮膚がんのリスクを高めます。UVBは表皮に届きシミの原因となり、UVAは真皮に届きシワ・たるみの原因となります。
更に50代以降の日焼けは、肌の土台にあたる基底細胞膜自体が、紫外線によりダメージを受けてしまうため修復に時間がかかり、皮膚表面に見えるシミに対するケアだけでは、限界があるそうです。
日々の紫外線対策は、健康で美しい皮膚を育む重要な基盤ともいえます。
【図3】UVBとUVAが肌に与える影響
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肌の健康を守る「皮膚バリア機能」
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肌の健康維持において保湿はとても重要です。しかし、皮膚バリアを守るためには、単に油分をのせるだけでは不十分です。
角層のバリアを担う代表的な成分、すなわち皮脂・角質細胞間脂質・天然保湿因子を補うことが欠かせません。石田先生は、セラミドやアミノ酸など、皮膚内部で水分保持に働く成分を含む保湿製品を推奨することがあるそうです。こうした選択が、正常なバリア機能の維持につながっていきます。バリア機能を保つ、重要な要素 代表的な組成成分 皮脂 皮脂腺から分泌される脂 ワックスエステル、トリグリセリド、スクワランなど 角質細胞間脂質 角質細胞同士のすき間をうめている脂 セラミド、脂肪酸、硫酸コレステロールなど 天然保湿因子(NMF) 角質細胞内にある低分子のアミノ酸や塩類など アミノ酸、乳酸、尿素、Ma,K,Ca,Mg等塩類など また、肌は年齢とともに変化し、同時にマイクロバイオームのバランスも変わってきます。「若いころから使っていた化粧品が、最近合わないかも?」ということがあれば、スキンケアを見直すよい機会かもしれません。大切なのは、その時点での自身の肌に合った保湿製品を選ぶことです。
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皮膚科医が指導するホリスティック スキンケア
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ホリスティック スキンケアは、皮膚治療において、体全体の健康とバランスを考慮に入れたアプローチのことです。患者さんのライフスタイルも含めて把握しながら、医師が洗顔・保湿・日焼け止めなどの具体的なスキンケア指導を行います。これにより、治療のコンプライアンスや満足度が向上し、最終的には治療目標の達成につながるとされています。

例えば日焼け止めは「どこに・どれだけ・どう塗るか・いつ塗り直すか」を具体的に伝えると、患者さんの実行率が上がるそうです。石田先生は、日本化粧品工業会の目安表も参照しながらご説明されているとのことで、日常生活であれば、SPF30、PA+++程度が基本となります。
日本小児皮膚科学会でも『赤ちゃんにも日焼け止めは使える』と明記されています。このとき、赤ちゃんや子どもには、ベビー用や低刺激と表示のあるものを選ぶとよいでしょう。赤ちゃんは汗をかきやすく、日焼け止めが落ちやすいので、耐水性のあるものが役立ちます。ただし、石けんや洗顔料で無理なく落とせるタイプを選ぶことも、大切なポイントです。
出典:日本化粧品工業会ホームページ_紫外線防止の基本
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シチュエーション別!日焼け後のホームケア
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それでもうっかり日焼けしてしまった後のホームケアについて、3つのシチュエーション別に教えていただきました。
シチュエーション1 シチュエーション2 シチュエーション3 海水浴で真っ赤っか!
今すぐレスキュー!赤くなってから2,3日後 赤みが引いてやや黒くなっている 


火傷と同じ!とにかく冷やす。
ステロイド外用薬や親水軟膏、日焼け止めだけ。
必ず皮膚科を受診しましょう。まだ赤みが続くときは、
炎症を抑えるために
ステロイド外用薬や親水軟膏、日焼け止めを使用。ターンオーバーをサポートし、メラニンの排出を妨げないようにするため、保湿ケアを徹底しバリア機能を補う。
ビタミンC誘導体やアルブチン、トラネキサム酸などの、
メラニンの生成を防ぐ成分が配合されたものを使っても◎。ステロイド外用薬は、なるべく皮膚科を受診し
適切な製剤を処方してもらいましょう。
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スキンケアと治療の実践を整理した 5つの「Right」
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5つのRightの実践により、健やかな皮膚を維持できます。
Right Skin 正しい肌状態の把握 今の肌状態を正しく理解し、正しいケアを。 Right Amount 正しい薬剤の使用量 保湿剤・外用薬・日焼け止めは「適量を守る」ことが大切。 Right Method 正しい使い方、塗り方 正しい順番・回数・塗り方で行う。「日焼け止めは毎日塗る」 Right Product 正しい製品選び 肌質・年齢・症状に合った製品を選ぶ。 Right Timing 正しいタイミング 季節や生活習慣に合わせたタイミングでケアを行う。
「花粉黄砂の時期は、帰宅後すぐに洗顔&保湿」
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石田先生からのメッセージ
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最後に、石田先生からメッセージを頂きました
以上、『光が残す痕跡「肌の変化」と未来を守るスキンケア』オンラインセミナーレポートでした。
最新の皮膚科学や医療内容を踏まえつつも、今から実践できる内容でしたね。
次回の皮膚科医師セミナーもご期待ください。
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