肌トラブルを革新!赤み敏感肌ケアの最前線
~治療をサポートするスキンケア方法~

iniksでは、肌悩み解決のサポートができるよう、スキンケアの情報発信に努めております。

2025年5月21日、ニキビの日※に、「肌トラブルを革新!赤み敏感肌ケアの最前線 ~治療をサポートするスキンケア方法~」オンラインセミナーを行いました。
今回はエキスパート対談として、近畿大学病院 皮膚科 美容皮膚科 レーザーチームリーダー 山本晴代先生、はやし皮ふ科クリニック 院長 林宏明先生に、赤み敏感肌ケアについてご講演いただきました。
※ニキビの日(5月21日):いつ(5)も、ニ(2)キビは、皮(1)膚科へ

2025.06.12

監修医師:山本 晴代 先生

近畿大学病院 皮膚科
美容皮膚科 レーザーチームリーダー

2004年近畿大学医学部ご卒業後、PL病院皮膚科医⾧、近畿大学病院 皮膚科 医学部講師を経て、現在、近畿大学病院 皮膚科で非常勤講師として美容皮膚科 レーザーチームリーダーを務める。大学病院の美容皮膚科外来では、正しい知識と適切な治療方法を伝える活動を行われており、山本先生は2007年から美容皮膚科外来を担当され、1人1人の皮膚状態と気持ちに寄り添った丁寧な診察を心がけられている。

監修医師:林 宏明 先生

はやし皮ふ科クリニック 院長

2002年川崎医科大学をご卒業後、同大学付属病院にてご研鑽を積まれ、2020年に故郷である神戸市に「はやし皮ふ科クリニック」をご開業。大学病院では一般皮膚科や免疫・アレルギー性皮膚疾患・乾癬・膠原病、酒さ・酒さ様皮膚炎などの診療を行っておられ、特に酒さ治療において造詣が深く、地域医療に貢献され、地元である関西のラジオへのご出演やご講演など、幅広くご活躍をされている。

  • 夏場によく診る顔面の皮膚疾患と敏感肌の関係

    • 夏場に悪化しやすい顔面の皮膚症状として、ざ瘡(ニキビ)や酒さ(赤ら顔)があります。
      夏は皮脂量の増加や、紫外線の影響で角化が進み毛穴が詰まりやすいため、夏場にニキビができやすくなる傾向がみられます。
      また酒さも紫外線が悪化因子となり得るため、紫外線が強くなる夏場に病態が悪化してしまう方がいらっしゃいます。

      そして、ニキビや酒さといった皮膚疾患をお持ちの方は、敏感肌の可能性が高いとのこと。敏感肌とは、皮膚のバリア機能が低下し、物理的・化学的な刺激に弱い肌の状態を示します。
      さらに、皮脂欠乏性湿疹や酒さ、アトピー性皮膚炎、ニキビなどの疾患は、治療薬による影響も含め、敏感な肌状態になる傾向があります。体質や素因による影響以外にも、季節性や環境要因により敏感な肌状態になることもあります。

      ひと昔前まで、ニキビは「青春のシンボル」とも言われ、皮脂分泌が活発な思春期に発症することが多く「ニキビ = 脂性肌」と思われている方が多いですが、実は健康な肌と比べ乾燥していることが分かっています。
      つまり、ニキビがあるからと言ってかならずしも脂性肌であるわけでは無く、「乾燥肌」かもしれませんし、外界の刺激に過敏な「敏感肌」かもしれません。

  • ニキビは毛穴の病気!

    • ニキビはなぜできてしまうのでしょうか。
      ニキビは皮脂分泌が増加し、毛穴が詰まり、皮脂が溜まり、その中でアクネ菌が増加することで発症します。
      皮脂はホルモンバランスの崩れなどでも増加しますし、ターンオーバーの乱れ、刺激や摩擦の習慣、バリア機能が低下することで毛穴が開いたり、詰まりやすくなったりします。
      アクネ菌が増殖した結果、炎症が起こり紅色丘疹、いわゆる「赤ニキビ」となり、肌が赤く見えてしまいます。
      あくまでもニキビは毛穴の病気であり、様々な要因で発症するため、若い方だけでなく、どなたでも発症する可能性がある病気です。

      実際に、長年ニキビ治療を行っていた方で、林先生のクリニックを受診された方が、実は酒さも併発しているということが、画像診断により明らかになったケースもありました。
      ニキビと酒さはどちらも顔が赤く見え、同じように見えるため鑑別が難しい疾患とのこと。
      顔の赤みが気になる時は、ご自身で判断せず、皮膚科専門医に受診しましょう。

  • ニキビに似ている肌の病気、酒さ

    • 酒さとは「赤ら顔」とも呼ばれ、鼻や頬、額などに赤みやニキビのような症状が出る病気です。皮膚の症状に加え、ほてりやヒリヒリ感などもみられます。30~50歳代に発症しやすく、男性よりも女性に多い傾向があります。50代になると更年期症状によるホットフラッシュなどが混在している場合もあるため、様々な要因を考慮する必要が出てきます。
      ニキビなのか酒さなのか、それとも違う疾患なのか、顔の赤みが気になる時こそ自己診断をせず、皮膚科専門医に相談しましょう。

  • レーザー治療で何でも解決?

    • 美容医療については、近年、施術の幅が広がると共に心理的ハードルも低くなり、比較的体への負担が少ない施術を中心に、広く需要が高まってきていると考えられています。これに伴い、美容医療を提供する医師・医療機関も増加している一方で、美容医療の利用件数の増加に伴う利用者によるトラブルの相談も増加している実情があります。(参考:厚生労働省医政局 美容医療の適切な実施に関する検討会の議論の状況について)

      レーザー治療もご専門の山本先生曰く、「美容皮膚科が治療の選択肢として広く知られてきている良い流れがある反面、実際に行う場合には慎重な見極めが必要」とのこと。
      もし特定の診断がつかない状態でレーザー治療をしてしまうと、元々の疾患が修飾されてしまい、診断をつけにくくなってしまいます。
      肌の状態に悩みがある場合には、いきなり美容医療を選択肢に入れるのではなく、まず一般皮膚科を受診しその原因を特定した上で、適切な対処をすることが、なりたい肌への近道だと考えます。
      その対処法が保険治療であったり、美容医療であったり、スキンケアであったりするわけですが、それを見極めるためにも自己判断はせず、まずは近くの皮膚科に相談してみましょう。

  • ニキビ治療におけるスキンケア

    • 中等症以上のニキビは皮脂分泌が多いですが、肌は乾燥傾向にあります。
      また患者様のスキンケアの傾向として、過剰な皮脂をとるためのスクラブなどを使用した過度な洗顔により乾燥してしまっていたり、過度な保湿をしてしまったりするなど、誤ったケアを行っていることがあります。
      ニキビの場合、基本的な洗顔は1日2回がおすすめです。洗顔回数に関する論文報告では、1日1回の洗顔ではニキビが悪化し、1日2回では改善、1日4回の洗顔では続かないことが多いとの報告もあります。

      ニキビ治療中の患者様が使用するスキンケアアイテムは、コメドができにくいことを確認しているノンコメドジェニックテスト済み、かつ低刺激性の化粧品を推奨します。皮脂量が多いTゾーンには化粧水やジェル基剤のものを、乾燥しやすいUゾーンには乳液やクリーム基剤を使用するなど、部位によって、保湿方法を変えるのもいいでしょう。
      山本先生は、年齢や性別、使用者の好みも考慮し、患者様が使いやすく、続けやすいものをご紹介されているとのことでした。特に男性の場合は、何種類もの化粧品を使うのは難しいこともあると思われるため、オールインワン保湿液などをおすすめすることがあるそうです。

  • 酒さ治療におけるスキンケア

    • 一方、酒さの場合、ニキビと同様のこともありますが、より肌が敏感なため、スキンケア製品はまずサンプルでお試しをしてもらい、刺激感を自覚しない製品の使用をおすすめされています。
      指導の際は、とにかく擦らない・刺激を与えないことを念頭におかれているそうです。
      酒さの肌は容易に刺激を感じてしまうため、拭き取り式クレンジングの使用やパッティングはしないように指導されているとのこと。使用するスキンケア製品は、各使用試験(パッチテスト、アレルギーテスト、スティンギングテスト、ノンコメドジェニックテスト)など、敏感肌の方でも使用しやすいと考えられるような試験の行われた、低刺激性の製品を目安にされているそうです。

      酒さにとって紫外線は悪化因子になるため、日傘や帽子など物理的な遮光も必要です。日焼け止めは散乱剤中心で、洗顔やお湯で落とせるものが使いやすくていいです。ですが、まずはサンプルを部分的に使用してみることが重要です。

      実際に山本先生のところへ通院されている患者様で、ご自身のスキンケア内容を見直したところ、長年悩んでいた頬の赤みやほてり感が軽快した方がいらっしゃったそうです。
      その方は、洗顔時間が長く、肌をこすっており、タオルでごしごしと拭いていたそうです。また、化粧水や乳液を付ける際も、押し込むように何度もパッティングを行い肌に負担がかかっていたことが分かっています。
      その後、ご指導された内容に沿って、ゴシゴシ洗いとパッティングを止め、低刺激な化粧品を使用し、日焼け止めを毎日使用することで軽快したそうです。

      やはりどんなに良い薬や治療を行っても、日常のスキンケア行動が間違っていると、肌の状態が良くならないことが分かります。

  • 男性患者様へのスキンケア・メイクアップ指導

    • 最近は男性の患者様からも、スキンケアの相談を受けることが多いそうです。
      特に男性の場合はニキビが重症化しやすいため、肌の赤みが強くなる傾向があります。その赤みを隠したいけれどカバーの仕方が分からない、というお声が多いそうです。
      その際、山本先生は正しいスキンケア方法をご指導されると共に、ノンコメドジェニックテスト済みのリキッドファンデーションで、ニキビをナチュラルにカバーする方法をお伝えされています。
      男性医師である林先生も、昨今の男性の美容意識の高さを感じられておられるそうで、スキンケアに男女は関係なさそうです。

      赤みをカバーする方法として、コンシーラーの使用もあげられます。しかし、一般的にコンシーラーは油分が多いため、毛穴を詰まらせニキビを悪化させてしまう可能性があったり、顔全体のカバーには面倒な場合があったりするため、広範囲にサッと塗れるファンデーションを提案されることがあるそうです。
      男性の場合はクレンジングが面倒と感じられる方もいらっしゃるため、お好みに応じて洗顔料のみで落とせるタイプのものをご紹介されているとのことです。

      昨今は様々なニーズに応じたスキンケア・メイクアップ製品が発売されています。男性のメイクアップも受け入れられるようになった時代だからこそ、肌トラブルでお悩みの男性の方も、適切な化粧品を選択することでナチュラルにカバーすることができます 。

  • 山本先生、林先生のスキンケア

    • 林先生は皮膚の治療にスキンケアは欠かせないと考えているため、ご自身が良いと思った化粧品ブランドをいくつか選択肢として用意しておき、患者様の要望に応じてご紹介するようにされています。林先生自身、普段は低刺激な保湿化粧水や、ビタミンCが入っている薬用保湿液と、日焼け止めを使用されています。

      山本先生は「摩擦しない」「日焼け止めを塗る」「こまめに保湿する」、この3つをスキンケアで大切にされています。

      例えば摩擦に関して、洗顔は泡洗顔にし、肌の負担を減らすためにクレンジング不要なファンデーションを使用されています。さらに、そもそも肌に触れる回数を減らすために、スキンケア製品やメイク製品の数をなるべく減らすようにしています。

      季節の変わり目や花粉の時期、日焼け後に肌の調子が悪くなることがよくあるそうで、紫外線が強い日は、日焼け止め美容液を2.3時間ごとにこまめに塗り直されています。林先生も日焼け止めは使用されており、日焼け止めの使用は重要なスキンケアの一つだといえます。山本先生は肌がすぐに敏感になってしまうので、使用する日焼け止めは、洗顔で落ち、低刺激性の製品で、かつ肌色トーンアップ効果のあるピンクやオレンジ系の日焼け止め美容液を使用していらっしゃいます。
      日焼け止めの使用だけでなく、日傘や手袋の活用、日陰や地下をなるべく利用するなど、物理的な遮光も心掛け、肌に負担をかけないようにされています。
      紫外線の防御は、皮膚がんや光老化の予防にも繋がります。面倒でも毎日心がけていきたいですね。

      また、保湿も大事にされており、保湿効果の高いスキンケア製品や、抗炎症作用が期待できるスキンケア製品を選ばれていらっしゃいます。日中、肌がつっぱるときは持ち運びが簡単な美容液やクリームをつけることもあるそうです。私たちも真似していきたいですね。

  • 山本先生、林先生からのメッセージ

    • 最後に、山本先生、林先生から皆様に向けメッセージを頂きました。

      皮膚疾患は治療だけではなく、化粧品を使用した適切なスキンケアとの相乗効果により、軽快することができると考えています。スキンケア方法を見直すだけでも、患者様の肌がきれいになることを実感しています。
      美肌への近道は、適切なスキンケアを行うこと。
      そのためにも、肌悩みがある場合は、まずはお近くの皮膚科を受診し、肌トラブルの原因を特定した上で、適切なスキンケアを実践いただきたいと思います。
      女性も男性も、ぜひお気軽に皮膚科医にご相談ください。

      以上、「肌トラブルを革新!赤み敏感肌ケアの最前線~治療をサポートするスキンケア方法~」オンラインセミナーレポートでした。
      肌トラブルがある時は一人で悩まず、皮膚科を受診し、正しいスキンケアで理想の肌を育てていきましょう。